研究概要 |
デジタル社会におけるサイバー・コモンズの生成・発展に関して,社会情報システム学の観点から展開を図った.サイバー・コモンズは,電子的なネットワーク上に成立する情報や知識の集積的空間である.この空間は,自然に成立している牧草地や森林などのコモンズとは異なっていることが判明した.すなわち,従来から論じられているコモンズについての議論は,その利用形態に関する議論が中心であるが,サイバー・コモンズについての議論は,その生成と利用の両面について議論すべきことが判明した.また,サイバー・コモンズでは,情報財のもつ特性についての議論を発展させる必要のあることが判明した. 生活医療情報との関連では,その共有化や,それらの情報や知識の収集や取得における協調,電子的な討議との関連では,自治体における電子的な討議の事例について調査し,情報公開との関連について,それぞれ検討を行った. ロジスティックとの関連では,その戦略におけるサイバー・コモンズの果たす役割の検討,仮想的な組織による取り組みのモデル化,インドネシアにおける農産物流通でのサプライチェーン・マネジメントのための情報システムに関する概念的設計などを行った. 消費者行動との関連では,消費者間オンライン取引における評判管理システム,消費者行動における集中化現象に関する情報チャネル効果,モバイル・コミュニケーションにおける多様性の減少について,それぞれモデル構築とシミュレーションを行った. 方法論に関して,マルチエージェント・シミュレータとの関連では,操作的オーガニゼーション・モデルの実現を図るための基礎的な事項の検討,学際的な領域との関連づけについては,用語間関係に着目し,社会情報学,調整科学,複雑系科学などにおける位置付けの解明を行った. 今後は,これらの知見に基づいて,サイバー・コモンズの特性についての解明に取り組む予定である.
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