研究概要 |
感性品質とは,人間のイメージによって計測される品質である.感性品質を設計に反映するためには、それを物理特性に変換する必要がある.本研究では、感性品質を評価し,設計に結びつけるための方法論を確立することを目的とした. 平成12年度は,感性品質の調査方法としてアンケート調査について研究を行った.一般にアンケート調査には形容詞対を並べたSD法が用いられる.本研究では,形容詞対を選択するための指針を得るために,過去の感性品質に関する事例の調査を行い,形容詞対の分類を行った.さらに,その分類と感性を解明する上で重要となる意味論および人間の認知知覚過程との関連を考察した.この結果をもとに,感性的なニーズを把握するための調査ではどのような情報を得るべきかを明確にし,SD法のアンケート調査に用いる評価用語選定の指針を提案した. 平成13年度では,この評価用語選定の指針を用いて,いくつかの商品に関する感性品質のアンケート調査を行った.そこで得られたデータの解析およびアンケート調査時に同時に調査した個人の属性に関する調査結果から,どのような個人差があり得るかを明確にした.その結果をもとに,個人差を考慮した感性品質の解析方法を提案した.この方法では,まず総合感性の二重中心化データに主成分分析を適用し、嗜好の個人差を明確にする.次に,感性評価項目および弁別の個人差を考慮して評価者の層別を行う.そして層毎にグラフィカルモデリングを適用して,評価結果と物理特性との関係を明らかにする.グラフィカルモデリングを適用することで,認知知覚モデルをもとにした感性品質の評価構造が明確になる. 本研究の成果により,系統的な評価用語の抽出と,感性品質を考慮した製品設計のための有用な情報獲得が可能となる.特に個人差を考慮することにより,マーケットセグメントをいかに構成すべきかが明確となる.
|