研究概要 |
本研究の目的は,地震に強い安全な住環境づくりのため,中南米諸国における組積造建築に多用されている壁体の代表的な構造形式である枠組組積造壁体(組積造壁体周辺を現場打ち鉄筋コンクリート造柱・梁部材等で補強する構造方式で,同様の方式が現代中国でも採用されている地域がある)を採り挙げ,ローコストで耐震的な組積造壁体の開発を行うとともに,地震国である開発途上国に多数存在している無補強の既存組積造建物に対する有効な耐震補強法の開発を行うことである。 過去2年間の実験的研究の範囲では,粘土焼成れんがを用いた組積造壁体に作用する鉛直方向応力度の大きさが壁体の耐震挙動に及ぼす顕著な影響が見られなかったので,本年度は材料強度の異なるれんがを用いて壁体試験体を製作し,鉛直方向応力度をパラメータとした水平加力実験を行った。実験結果によれば,材料強度の高い組積材を用いたほうが鉛直方向応力度が壁体の最大耐力に及ぼす影響が大きい傾向があった。 さらに,3年間の実験結果を基に本研究で採り上げたパラメータが組積造壁体の剛性や耐力ならびに変形性能に及ぼす影響を整理するとともに,各種終局強度の推定方法について検討を行った。その結果,3次元試験体におけるフランジ壁の存在や鉛直方向軸力の大きさなどが壁体の初期剛性,せん断ひび割れ強度,最大耐力,破壊モード,塑性変形性能など耐震性能に及ぼす影響と問題点や今後の検討課題などを明らかにした。
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