研究概要 |
平成12年度に完成した質量選択飛行時間分析装置を用いてAr, He,および重水素にいて実験を行った.測定は前年度明らかにした衝撃波過熱が生じる圧力以下のイオン源内圧力=0.5Paを中心に行った.最小二乗法に基づいてマックスウェル分布への近似を行い,温度を計算したところ,重水素分子,ヘリウム原子,アルゴン原子に対して放電電圧を63Vで一定として,放電電流を5Aまで変化させた測定において,それぞれ1.7Kcm^3/W,0.6Kcm^3/W,1.9Kcm^3Wの加熱率を得た.ただし,重水素では放電電力密度6W/cm^3において最大温度1200Kに到達した後,重水素分子の温度は放電電力の増加とともに下がる傾向を示した.これは重水素分子の高速成分が解離によって失われたためと考えられるが,これに対応する重水素フラックスの減少も実際に確認することができた. 水素原子についてはMSTOF信号を得るのに十分な信号が得られなかったので,放電に伴う水素原子信号を高分解能四重極質量分析器により計測した.この結果,高放電電力密度において分子解離が進む傾向は得られたものの,定量的な評価が行えず,やはりノイズを低減した上でのMSTOF法が必要である事が確認され,真空系統の大幅な変更を計画中である. 今回の実験により,実際のプラズマ加熱用負イオン源での数kWの放電電力に対応した中性分子温度を1000Kと見積もって良いことが示された.これら結果の一部については,平成13年9月にオークランドで開催されたイオン源国際会議にて発表した.
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