研究概要 |
塩化ジフェニールヨードニウム(DICl)((C_6H_5)_2ICl, MW316.57)は電離放射線を照射により,光分解し水素イオンを発生する。この溶媒中のクリスタルバイオレットラクトン(CVL)(C_<26>H_<29>N_3O_2,MW415.54)は発生した水素イオンによりラクトン環が開裂し青く発色する。吸光度の最大値は可視領域の610〜620nmにある。DICl20mM/L, CVL1mM/Lでの反応性が良好であった。エタノールを溶媒とした反応系である。固相化するためにゼラチン-エタノール溶液の濃度を変えて,DIClおよびCVLの化学線量計を調整した。ゼラチン-エタノールの溶媒液は透明度が落ち,バックグランドの吸光度が上昇した。50Gyまでの放射線照射による吸光度変化が乏しく感度の低下を認め,この系による高感度化学線量計としての使用は困難と判断した。 トリフェニールエタン系の機能性色素は近紫外光より短波長の暴露で青色に変色する。本研究の経過中にこの機能性色素をポリエステル膜に塗布したGAFCHROMIC MD-55が発売された。従って,本研究ではGAFCHROMIC MD-55の特性を解析し,実用性を検討することにした。 放射線照射によって可視領域に620nmと670nm付近の二つのピークを認めた。線量と672nmの吸光度の関係は20Gyまでの範囲で直線関係が得られた。線質による吸光度変化はX線と電子線では認めなかった。分割熊射により吸光度は若干上昇するが,有意差は認めなかった。線量率効果は,低線量率照射で若干の吸光度の低下を認めたが,有意差はなかった。しかし,1週間保管の保管で有意に吸光度が大きくなり反応が進行することを示唆した。しかし,直線性は保たれるので,測定時期に合わせた検量線を求めておくことで,線量測定は可能と考えられた。
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