| 研究概要 |
流域全体での森林による窒素固定量および森林からの流出全窒素フラックスを推定するため,木曽川水系の飛騨川支川青屋川流域(45km^2),長良川全流域(2000km^2)および長良川支川吉田川流域(190km^2)を対象として,大気(降水および乾性沈着),植生,河川水それぞれの間の窒素フラックスを観測するとともに,森林簿によるグランドトゥルースデータ整備および人工衛星リモートセンシング画像情報解析から,次の研究成果を得た.
1.大気から森林域への全窒素成分供給現象をモデル化すると同時に,雲粒凝結核への窒素成分取り込み現象(レインアウト)および降水時の大気中全窒素除去現象(ウォッシュアウト)をモデルと現地観測から検討した結果,山地森林域では,レインアウトおよびウォッシュアウトによる含有全窒素濃度がそれぞれ0.10〜0.17および0.75〜0.97t/km^2/yrとなり,森林での窒素収支において重要となることが明らかになった.
2.水文・水質・気象に関する現地観測から森林域での窒素流出特性を検討した結果,森林内での窒素蓄積能力が樹種分類ごとの季節特性として評価できることが明らかとなった.
3.Landsat/TM画像情報の輝度値確率分布を基礎として,より詳細な地物や植生特性(樹種,樹種別材積,樹種別成長率など)を判別する新しい方法を提案し,森林内年間窒素蓄積量や年間窒素流出量の推定に関するこの方法の適用性を現地観測結果により検証した.
4.流域環境の良好度を判定するための指標として,流域内窒素移動に関する連続性パラメータを提案し,これにより総合的な流域環境評価が可能になることを示した.とくに,森林域では,樹種の多様性確保や植林と伐採の円滑な繰り返しなどの人為的な森林管理が重要になることを示した.
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