研究概要 |
近畿,東海および関東地方において採取した表層土壌中の1,3-,1,6-および1,8-ジニトロピレンを我々が開発した白金/ロジウムカラム還元-蛍光-PLC法により分析した.その結果,分析を行った30検体のほぼすべてよりジニトロピレン類が検出され,土壌が広くジニトロピレン類によって汚染されていることを明らかにした.土壌中におけるジニトロピレン類の含量は採取地点により大きな差があり,数pg/g土砂〜数ng/g土砂の濃度で分布していることを明らかにした.また,土壌抽出物の変異原性に対するジニトロピレン類の寄与率を調べたところ,土壌抽出物の変異原性の数%〜約50%がジニトロピレン類により説明可能であることが分った. また,極めて強い変異原性を示し,かつジニトロピレン類の寄与の少なかった土壊より新たに3-ニトロベンゾアントロンを検出した.3-ニトロベンゾアントロンの分布状況を明らかにするため,大気中および土壌中の3-ニトロベンゾアントロンの分析法を開発した.大気浮遊粉じん中および土壌中の3-ニトロベンゾアントロンは順相系カラムおよび逆相系カラムを用いて効率的にクリーンアップし,ヒドラジン-ラネーニッケル還流法により選択的に3-アミノベンゾアントロンに還元することにより蛍光-HPLCで高感度に混雑物質の妨害なく分析することが可能であることが分った.本分析法を用い,大気浮遊粉じんおよび表層土壌中の3-アミノベンゾアントロンを分析した結果,大気中の濃度は数pg/m^3であった.土壌中の濃度は試料によりばらつきが大きく数pg/gから数百pg/gであることが分った.大気粉じんおよび表層土壌のサルモネラ菌TA98株に対する変異原性の数%が3-ニトロベンゾアントロンにより説明可能であった.
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