研究概要 |
堀川は名古屋市の中心部を流れ名古屋港につながる感潮河川であり,上流部には名城下水処理場からの放流水が大量に流れ込む。本研究では,堀川および堀川と合流する新堀川の水質を十数地点において調査し,堀川の水質汚濁の現状および汚濁原因機構を解明するとともに,汚濁物質の有効な除去方法について室内実験による検討を試みた。野外調査においては,流下方向だけでなく,深さ方向についても数点の採水を実施し,水質の水平・鉛直濃度変化から水質汚濁機構を検討した。得られた結果および結論を以下に要約する。 1.名城下水処理場付近において濃度が上昇する重金属として,Mn,Ni,Sb,NH4-N,NO3-Nが挙げられ,下水処理放流水による影響と考えられる。特にNiは,水質環境基準旧指針値の最大十数倍高い濃度が観測された。 2.下流で濃度上昇する重金属として,これまでのSeとCrが観測された。これらの排出源は,名古屋港臨海部の工場排水と推定される。 3.鉛直方向の河川水中Ni濃度の変化を深さ50cm間隔で実測し,淡水と海水との混合を考慮した予測値との比較を行った。その結果,順流時に予測値と実測値との差が大きくなり,逆流時には差が小さくなることから,海水と淡水の境界付近でのコロイド状Niの淡水域への濃縮効果が濃度分布に影響を与えているのではないかと推定した。 4.Niの河川中での存在形態および河川における効果的なNi除去方法の検討のため,活性炭とイオン交換樹脂による吸着実験を実施した。その結果,河川中Niの一部は,コロイドへの吸着態あるいは有機性配位子と結びついた分子状錯体を形成している可能性が示唆された。また最も効果的にNiを除去することができた吸着剤は活性炭であった。
|