研究概要 |
ステロイド系抗生物質ヘルボール酸を産生するカビCepharosporium caerulensよりオキシドスクアレン閉環酵素(0SC)活性の存在を確認の後、培養2日目の菌体より抽出したRNAを鋳型として、既知のOSCにおいて保存されている配列をもとに設計した縮重入りプライマーを用いて、RT-PCR法により約2kbpからなるcDNA全長配列を得ることに成功した。そのアミノ酸配列は、ラット及び酵母由来のラノステロール(LA)合成酵素と約37%の相同性を示した。OSC欠損酵母変異株に発現させたところ、LAを生成することが示された。このクローンでは、OSC酵素活性部位を構成するとされるアミノ酸残基H146,H234,T384,V454,D456が保存されていた。そこでこのうちプロトステロール(PS)カチオンの安定化に寄与するとされるH234とD456に着目し、部位特異的変異酵素を作成して、Coreyらの変異実験の追試を行った。即ち、H234についてはW, F, Y, A, E, K, R, N, Q, C, S, T, M置換体を、また、D456についてはE, N, H置換の、以上計16種の変異酵素を作成し活性を検討したところ、H234をW, K, Nに置換したものに関してはLA合成酵素活性が認められたが、それ以外の変異酵素の活性は完全に消失した。また今回新たに我々は、各変異酵素における酵素反応生成物についても詳細に検討したが、LA以外の生成物は検出されなかった。最後に、菌体よりNative PS合成酵素の精製を試みた。本酵素は、これまでに報告のあるOSCとは異なり活性の発現に界面活性剤の添加を必要としなかった。硫安分画、陰イオン交換クロマトグラフィー等電点電気泳動などの分画手段を組み合わせることにより、完全精製の試みが進行中である。
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