研究概要 |
タンパク質の不溶化現象は,バイオテクノロジー分野や医学生命科学分野において大変大きな問題となってきている。本研究では,タンパク質一般の細胞内外での不溶化現象に関するタンパク質科学的,分子論的な研究を様々な方法を用いて行った。 1.トリオースリン酸イソメラーゼ(TIM)の構造形成中間体の特徴付け 二量体であるTIMの構造形成中間体の特徴をNMRなどの分光学的な手法を用いて明らかにし,部分的に構造をとった単量体が存在することを明らかにした。 2.耐熱性Mn-カタラーゼのインクルージョンボディ化の解消 Mn-カタラーゼの大量発現では,タンパク質は大腸菌内でアグリゲーションを形成(不溶化)し,インクルージョンボディを形成するが,分子シャペロン(GroEL, GroES, DnaK, DnaJ, GrpE)を共発現すると非常に効率よく可溶化し,正しい活性を持った構造になることが明らかになった。 3.GroESとαシヌクレインの構造変化とアミロイド様線維形成 シャペロニンの一つである7量体GroESを高濃度で,Gdn-HCl変性させて数日間放置すると,コンフォメーション変化を起こし,不溶化し,アミロイド様線維を形成することが,チオフラビンT染色や電子顕微鏡によって明らかになった。また,元々構造を形成していないαシヌクレインタンパク質では,イオン強度を上昇させて,分子をコンパクトにするとアミロイド線維を形成しやすいことが明らかになった。様々なタンパク質の構造変化としての不溶化とアミロイド様線維化の機構についてタンパク質科学的な洞察が得られた。
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