研究概要 |
大腸菌ではATP結合型DnaA蛋白質が複製開始DNA領域と結合し開始複合体を形成する。申請者らは、複製開始反応後、DNAポリメラーゼIII(大腸菌の染色体レプリカーゼ)がDNA上にロードされて形成される複合体(スライディングクランプ)によって、DnaA蛋白質のATPが加水分解され、複製能がないADP結合型へ変換されることを見出した(Cell,1998)。この機構をDnaA蛋白質の制御的不活性化(RIDA)と命名した。この機構は過剰な複製開始を防止する。申請者らはin vivoにおいても複製開始前にはATP結合型DnaA蛋白質が蓄積し、複製開始後速やかにADP型へと変換していくことを明らかにした(EMBO J.,1999)。第1の目的である、DnaA蛋白質の不活性化の分子機構・DNA複製との共役機構の解明、に関しては、RIDAに必要な因子(ldaB/Hda蛋白質・遺伝子)を同定し、精製した蛋白質のみを用いてin vitro再構成系の構築にも成功した。(EMBO J.,2001)。この系を用いて、RIDA機構におけるHda蛋白質の機能を解析した(学会等で発表済み)。また、スライディングクランプとDnaA蛋白質との相互作用に必要なDNA構造を明らかにした(学会等で発表済み)。さらに、RIDA反応に必要なDnaA蛋白質のアミノ酸残基の同定も行い(Mol. Microbiol.,2001)、RIDAの複製制御におけ必須な機能を裏付けた(J. B. C.,2002)。加えて、DnaA蛋白質の細胞周期依存的活性化の分子機構の解明のため、ADP型DnaA蛋白質を再活性化する因子の探索を行い、ある特定のDNA存在下で機能する蛋白性因子の存在が強く示唆された(学会発表済み)。そのような機能DNA断片をDARSと名付け、最小領域の決定・機能単位の同定を行った(学会発表済み)。以上のように、本計画研究では、DnaAno抑制システム(RIDA)の分子機構解明と複製開始の活性化因子の探索という2つの課題に対し充分な進展が得られた。
|