研究概要 |
本研究では,出芽酵母小胞体の分子シャペロンJem1pと相互作用する,出芽酵母の新規核膜タンパク質Nep98pの機能解析を目的として研究を行なっている.本年度は,Nep98pの機能および機能領域の解析を行なった.遺伝子破壊実験によって,Nep98pの機能が酵母の増殖に必須であることが示されている.そこでNep98pの機能する過程を明らかにするため,Nep98pに関する温度感受性変異株の作製を行なった.得られた温度感受性変異株を制限温度にシフトすると,G2/M期に対応する細胞の割合が増加した.また,そのような細胞中では核分裂の進行に欠損が観察され,抗チューブリン抗体を用いた蛍光抗体法によって,スピンドル形態に異常を示すことが明らかとなった.電子顕微鏡を用いた解析から,nep98温度感受性変異株ではスピンドル極体の構造に異常を持つことが明らかとなった.以上の結果から,Nep98pはスピンドル極体の機能発現に必須な役割をはたしていると考えられる.スピンドル極体の機能は,酵母接合時の核融合にも必要であり,nep98温度感受性変異株の接合子は2つの1倍体核の接近と核外膜の融合の過程に欠損を示すことが明らかとなった. Nep98pは膜貫通領域を1つ持つ膜内在性タンパク質であり,N末端をサイトゾル側に向けたトポロジーをとる.また,C末端側にはJem1pとの相互作用領域が存在する.これらの領域の機能を明らかにするため,様々なNep98pの部分欠失変異株を作製した.この結果,Jem1pとの相互作用領域は酵母の増殖に必須であり,ここがわずかでも欠失すると酵母は致死となることが明らかとなった.また,N末端のサイトゾル側ドメインは酵母の増殖に必須ではなかったが,接合時の核融合およびNep98pの核膜局在に必要であることが示された.
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