研究概要 |
研究成果:分裂酵母にカルシニューリンが存在することに着目し、細胞増殖にカルシニューリン(CN)の活性が必須であるような変異体(免疫抑制薬に感受性を示す)を10種分離し、its(immunosuppressant and temperature sensitive)変異体と命名し,原因遺伝子の同定と機能解析を行った。本年度はits3変異体およびits8変異体についての解析結果を報告する。 1)its3変異体の原因遺伝子はPI45P2合成酵素であるPI4(P)5 kinaseをコードしており,種を越えて高度に保存されている。its3変異体ではPI(45)P2の量が著明に低下しており,its3遺伝子を発現するとPI(45)P2の量が増加した。its3変異体は制限温度,あるいはFK506処理により,アクチンパッチの異常と細胞質分裂異常を示すことを明らかにした。さらに,GFP-Its3は細胞膜と中隔に局在し,PI(45)P2と高い親和性を示すPLC-PHドメインの局在と一致した。以上の結果から,カルシニューリンとPI4(P)5 kinaseは協同的に分裂酵母の細胞質分裂,アクチン細胞骨格系の維持に関与していることが示唆された。(業績1) 2)its8変異体の原因遺伝子はGPIアンカー合成酵素をコードしており,酵母から高等動物まで高度に保存されている。its8変異体は高温下でinositolの取り込みが著明に低下していたことから,its8変異体ではGPIアンカー合成が低下していることを明らかにした。さらに,its8変異体の表現型を解析した結果,its8変異体は細胞壁が脆弱であること,細胞質分裂と細胞極性が異常であることを示した。以上の結果から,カルシニューリンとGPIアンカー合成酵素は細胞増殖のみならず,細胞壁のintegrityの維持,細胞質分裂に重要な機能をシェアしていることが示唆された。(業績2)
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