研究概要 |
(1)新規β-1,4-ガラクトース転移酵素(β-1,4-GalT)の基質特異性の解析 生体には複数のβ-1,4-GalTが存在し、今日まで我々を含む幾つかのグループから7つの酵素が存在することが報告されている。我々はこれらの遺伝子を昆虫細胞Sf-9に導入・発現させ、その基質特異性を解析した結果、β-1,4-GalTs I-VIはN-型糖鎖のガラクトシル化に関与していることを明らかにした。さらにこれらの酵素はただ重複して存在しているのではなく、N-型糖鎖の各分岐側鎖に対してそれぞれ特異性をもつことを明らかにした。 (2)ヒトβ-1,4-GalT遺伝子の導入による癌細胞の性質の変化の解析 細胞が癌化すると、β-1,4GalT IIの遺伝子発現が減少し、β-1,4-GaIT Vの遺伝子発現が増大する傾向を見つけた。細胞表面の糖鎖の発現パターンと細胞の性質には相関が見られるので、癌細胞にβ-1,4GalT IIのセンスcDNAを導入しその発現を増大させたり、あるいはβ-1,4-GalT VのアンチセンスcDNAを導入しその発現を減少させ、これらの細胞をクローニング後、マウス皮下に移植し、腫瘍形成や、尾静脈への注入による肺への転移を解析した。その結果、両遺伝子導入細胞の腫瘍形成は著しく抑制され、形成された腫瘍塊は、対照とは異なり細胞が密に配列していた。またβ-1,4-GalT IIセンスcDNA導入細胞では転移抑制が見られたが、β-1,4-GalT VアンチセンスcDNA導入細胞では見られなかった。培養系で、遺伝子導入癌細胞には部分的な細胞間接着が見られ、その増殖速度は対照に比べ25-50%程度減少していた。これらの性質の変化は、細胞表面のガラクトシル化を含む糖鎖修飾の変化によるものと考えられる。
|