研究課題/領域番号 |
12680722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
発生生物学
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
石野 知子 東海大学, 健康科学部, 教授 (20221757)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2001年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2000年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
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キーワード | クローンマウス / 胎盤異常 / インプリンティング遺伝子 / 遺伝子発現 / ES細胞 / エピジェネティクス / 生殖細胞系列 / インプリンティングの消去 |
研究概要 |
種々の哺乳類で体細胞クローンの誕生が報じられたが、いずれも出生率は極めて低く、また、正常に出生した場合でも、胎盤の過剰形成等の異常や、新生児での致死率が高い。この原因としては、未受精卵中での体細胞核の初期化が不完全であり、個体発生過程における遺伝子発現制御に異常を生じている可能性が考えられる。我々は、体系的なスクリーニングで分離した、インプリンティング遺伝子群、父親性発現遺伝子(Peg)と母親性発現遺伝子(Meg)を指標として、体細胞クローンマウスでの遺伝子発現の解析を行った。ES細胞核を用いたクローンマウスでは、インプリンティング遺伝子の発現に異常を生じているという報告があったが、すでに、ES細胞の段階でインプリンティング遺伝子の発現に異常を生じていると指摘されている。一方、我々の用いた体細胞クローンマウスでは、新生児期致死性、形態異常はほとんど見られなかった上に、ゲノムのインプリンティング記憶も正しく保持されていた。つまり、クローンの個体でも、由来となった体細胞核内での記憶と同じように、Peg遺伝子は父親性発現を、Meg遺伝子は母親性発現を示していた。以上より、クローン作製において、核を提供するドナー細胞のゲノムの状態-ゲノムのエピジェネティクス-が重要であることを示唆し、Scienceに発表した。我々の結果では、体細胞クローンの胎児・新生児のゲノムインプリンティングは正常であったが、胎盤では、一部のインプリンティング遺伝子の発現に異常が見られた。胎盤での遺伝子発現の異常が、クローンマウスの出生率の低さと関係があるのかどうかについては、今後の研究が必要である。 本研究のもう1つの成果は、始原生殖細胞から作製したクローンマウスを用いて、ゲノムインプリンティング記憶が、生殖細胞系列において消去される過程を明らかにしたことである。生殖細胞系列では、それまでの体細胞タイプのゲノムインプリンティングを個体の性別に合わせて父親タイプまたは母親タイプのインプリンティングに刷り込み直す必要がある。我々は、生殖細胞系列において、今までのゲノムインプリンティングの記憶を1度消去して、刷り込みをし直すことを仮定していたが、本研究により、記憶の消去の時期が胎児期10.5日から11.5日であることを特定し、Developmentに発表した。 以上の研究により、体細胞クローン動物の遺伝子発現やゲノムインプリンティングの機構解明について新しい視点を導入できたと考えている。
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