研究概要 |
仙髄副交感節前神経に対する中枢性および末梢性調節機構を明らかにする目的で,逆行性トレーサー実験,神経切断実験ならびに免疫組織化学を組み合わせた研究を行い,以下の結果を得た。 1.ラット副交感節前神経細胞はL6・S1レベルの脊髄中間質外側部に限局し,これらの節前神経の50-60%がNO synthase免疫組織化学で陽性であった。 2-1).腰髄交感神経レベルには無く,副交感節前神経細胞に特徴的な入力線維に,後角外側を回って節前神経領域に至るsubstance P (SP), calcitonin gene-related peptide (CGRP), vesicular acetylcholine transporter (VAChT), vasoactive intestinal polypeptide (VIP)陽性線維があり,CGRP線維は一部にSPを共存して節前神経細胞の周囲で網目状終末を形成していた。 2).中心管背側部から中間質外側部に向かうenkephalin (ENK)陽性線維は交感,副交感の両方に存在するが,仙髄副交感レベルのENK終末はneuropeptide Y (NPY)を共存し,CGRP網目状終末の外側に多く分布していた。 3).Serotonin (5-HT)およびtyrosine hydroxylase (TH)陽性神経終末が腰髄交感節前神経細胞の周囲に濃密に分布するが,仙髄副交感節前神経細胞に対しては選択的な分布を示さなかった。 3.上記神経終末はL4,5脊髄の横断実験で大きな変化を示さず,大部分が脊髄内在性あるいは末梢由来であることが示唆された。 4.末梢神経根の切断実験により,VAChT, VIP, SP, CGRP陽性終末には後根経由で末梢から投射するものがあり,そのうちVAChT, VIP陽性線維は感覚神経節よりさらに末梢で,直腸下部の筋間神経叢に存在する神経細胞由来であることを示唆する結果が得られた。 5.Vanilloid Receptor 1 (VR1)陽性神経終末が,脊髄後角I, II層のSP, CGRP陽性線維および後角外側を回って節前神経細胞に至るSP, CGRP陽性線維の分布と一致して認められ,節前神経細胞に対して直接入力することが示された。 6.骨盤内臓にはCGRP, SP陽性線維が多数分布しているが,VR1陽性線維が多く認められるのは尿管,膀胱底部,尿道起始部の上皮下および平滑筋層で,尿管,膀胱からのVR1陽性感覚神経による節前神経調節が示唆された。
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