1.ラット大脳抽出液におけるAβの分解に関与するプロテアーゼを分離した結果、カテプシンDであることが判明した。カテプシンDがAβ分解に関わる主な酵素であるとするならば、家族性アルツハイマー病に関連する変異Aβの分解に関して野生型との違いが期待される。そこで、野生型(Aβ12-28)、FAD/CAA(Aβ12-28;A21G)、FAD-Dutch (Aβ12-28;E22Q)の三種のペプチドのカテプシンDによる分解を測定した。その結果、FAD/CAA型変異Aβ12-28は他のAβ12-28の20分の1の分解速度であった。この事実はFAD/CAAにおいてはカテプシンDによるAβの不十分な分解がAβの蓄積とアミロイド細線維の形成に関係している可能性を示唆している。2.γ-セクレターゼはAβ42/43を生成する酵素であり、未知のカルボキシペプチダーゼによるC-末端の切り出しによってAβ40が生成されると予測して、ラット大脳抽出液についてペプチドアルデヒド型プロテアーゼ阻害剤によって阻害されるカルボキシペプチダーゼを検索した結果、カテプシンAを得た。ペプチドアルデヒド型プロテアーゼ阻害剤共存下で培養した細胞はAβ43/42の産生(分泌)が上昇するという過去の報告はカテプシンAの阻害による結果である可能性がある。3.細胞毒性が強いとされているAβ25-35の毒性がPC-12細胞、SK-N-SH細胞では著しく弱いことを発見した。Aβ42のC末端の配列と細胞毒性について検討したの結果、Aβ25-35よりもAβ42のC末端ペプチドの方が細胞毒性が強いことが判明した。アミロイド形成能の高いAβ25-35よりも、Aβ42のC末端ペプチドの方が細胞毒性が高いという事実は、アミロイド仮説に疑問を提示するものである。
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