研究概要 |
連続磁気刺激(rTMS)がうつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経疾患の治療に使用されている。この作用機序として、何らかの長期的効果が生じているはずである。この機序を解明する目的で以下の2点についてこの2年間で研究した。 1.rTMSは直接の刺激点以外に効果を示すか。 中枢神経は、線維を介して離れた部位が連絡し合って、その機能を発揮している。そこでrTMSの効果も、この連絡を介して発生していると考えれる。運動野を刺激した時の効果を対側運動野へのTMS(文献3,4)、同側感覚野のSEP(文献5)、SPECT、PETなどを用いて検討した。運動野のrTMSにより、同側の感覚運動野のみならず、対側の感覚運動野、同側の視床、対側の小脳などの離れた部位に機能変化が生ずることが証明された。以上より、rTMSにより刺激部位と離れた部位にも機能変化が生ずると考えた。 2.rTMSは、刺激終了後にも持続する効果を誘発するか。 rTMSが治療効果を発現するためには、rTMS終了後も持続する効果(after effect)を誘発しなければならない。この点を検討するために、SEP(文献5)、ABR, VEPなどを用いて、運動野へのrTMS後に持続する効果を誘発できるかを研究した。1HZ,200発のrTMSにより、2時間位続く効果を誘発できた。さらに、PET、SPECTなども用いてafter effectについて検討している。以上により、rTMSは刺激終了後も時間単位で持続する効果を誘発できると結論した。 以上の結果から、パーキンソン病にrTMSが効果を出す機序として、rTMS後に視床に持続する変化を誘発した(functional thalamotomy)可能性を考えた。
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