研究概要 |
G : C→T : Aトラスバージョン突然変異の原因となるDNA中の8-オキソグアニンは8-オキソグアニン-DNAグリコシラーゼ(OGG1蛋白質)によって認識され塩基除去修復の過程を経て修復される。このDNA修復酵素が個体レベルで発癌抑制に果たす役割を評価するためにOGG1+/-マウス同士の交配で得られたOGG1-/-マウスとOGG1+/+マウスを,自然観察(69〜76週)の後解剖して発生した腫瘍の種類や頻度を比較した。C57BL/6J x129Sv (ES細胞)の遺伝的背景を持つOGG1-/-マウスでは11匹中6匹(55%)に肺の腫瘍が観察されたが,OGG1+/+マウスでは20匹中3匹(15%)だった。 次に,酸化ヌクレオチドを分解することで複製過程におけるDNAへの8-オキソグアニンの取込みを抑制していると考えられているMTH1を欠損させることで,さらにDNA中の8-オキソグアニン含量が増加することを期待してMTH1,OGG1二重欠損マウスを作製した。野生型(TTGG),MTH1欠損マウス(ttGG),OGG1欠損マウス(TTgg),MTH1,OGG1二重欠損マウス(ttgg)を用いて自然発癌実験を行ったところTTggマウスでは肺腫瘍が発生したが,予想に反してttggマウスでは肺腫瘍は観察されなかった。DNA中の8-オキソグアニンの含量を調べたところ,ttggマウスではTTggマウスと同程度の蓄積が見られた。 以上の結果から,OGG1遺伝子が発癌抑制遺伝子であること,MTH1遺伝子欠損によってOGG1遺伝子欠損によって生じる肺腫瘍が抑制されることが明らかになった。
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