研究概要 |
心臓の頻脈性不整脈の成立には心室内における興奮の旋回現象(リエントリ)が重要な役割を果たすことが知られている。近年、膜電位感受性色素で染色した心臓の表面から膜活動電位を光学的に記録する実験システムが開発され、リエントリ発生のメカニズムが心室各部の活動電位波形変化の面から解析されるようになった。しかしながら高い空間・時間分解能で高品質の膜電位信号を得るといった観点からは現状の技術は不充分であり,リエントリ発生時の複雑な心臓電気生理現象を観測する上で現在の光マッピングシステムには限界が存在する。本研究は膜電位感受性色素で染色した灌流標本心臓からの膜電位光シグナルを,青色発光ダイオオードを励起光源として,高速度ビデオカメラにより優れた空間・時間分解能でかつ心臓各部位で高品質に得ることができる測定システムを製作し,これを用いて不整脈の研究において近年重要視されているスパイラルリエントリ現象を観測し,リエントリの発生・停止に関する新しい知見を得ようとするものである。今回開発した高速度DVCRを用いる計測システムは従来のフォトダイオードアレイに基づくシステムのS/Nの良さと時間分解能を保持しつつCCDカメラを用いた従来システムと同等の高空間分解能を実現したものであり,256×256=65536点での膜活動電位波形を数秒間サンプリング間隔1[ms]程度,空間分解能約0.2[mm]という高い空間・時間分解能で膜活動電位を計測可能である。本システムを使用すれば局所の活動電位波形の詳細な分析も可能となることから,抗不整脈薬などのリエントリダイナミクスに及ぼす影響の検討など局所の細胞膜活動電位変化と大域的なリエントリパターンの相互の関連性を検討するような研究の有力な研究ツールになるものと考えられる。また複数台の高速度ビデオカメラを同期使用し、広範囲の膜活動電位パターンの変化を観測することが可能となった。
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