研究概要 |
キトサンは生体適合性,生分解性,生物活性などの機能を有しており,医療材料,および生命工学の素材としての応用が期待されている.一方,親水性高分子の分子鎖中に疎水性基を導入することで,水溶液中で自己組織化し,高次構造が制御された高分子集合体を形成することが知られている.本研究でもキトサンの高次構造制御を目的とし,昨年度までに水溶性キトサンであるグリコールキトサンに疎水性置換基であるコレステロールを導入した新規な疎水化キトサン誘導体の合成し,その誘導体は分子間で会合することを見出した.本年度は,Mannich反応を利用することによりフェノール性置換基をキトサンのアミノ基に一工程で導入できることを見出した.さらに,新たにグリコールキトサンに疎水基としてデヒドロアビエチル誘導体を剛直な芳香環をリンカーとして導入した新規な疎水化グリコールキトサン誘導体を合成し,コレステロール誘導体との会合体形成挙動の比較を行った.その結果,コレステロール誘導体に見られた会合挙動は,剛直なリンカーを有するアビエチル誘導体では見られなかった.このことから,会合体形成に対しキトサンと疎水基間のリンカー部分の自由度が大きく影響することを見出した.さらに,両親媒性分子は会合体形成能以外にも乳化安定化効果を有することも知られていることから,本研究で合成したグリコールキトサン誘導体による乳化安定化効果を検討した.その結果、疎水化グリコールキトサン誘導体を含む水相が上相に,クロロホルム相が下相に2相分離した混合溶液を撹拌した後,4℃で20時間放置することで下相のクロロホルム相が安定した乳化状態となり,疎水化グリコールキトサン誘導体は乳化安定化能を有することを見出した.
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