研究概要 |
細胞磁気計測,蛍光顕微鏡,微分干渉顕微鏡,共焦点レーザ顕微鏡など多くの手段で,生きた細胞の細胞内運動について研究した.細胞磁気計測は我々が開発した手法であり,生きた細胞の細胞内運動や細胞骨格の機能や性質を調べる数少ない方法のひとつである.本報告では,主に細胞磁気計測によって細胞内の運動のエネルギーを計測し,それを蛍光抗体法による細胞骨格の観察や,微分干渉顕微鏡による細胞内運の観察と関連づけようとした.細胞骨格としては微小繊維と微小管に注目して,それらを破壊する薬剤を投与したときの,各実験結果の比較などを行ってきた.残念ながら結果をまだ統一的に説明するに至っていない.これら2つの繊維の関係も単純ではないのかも知れないが,もう一つの細胞骨格の要素でみる中間径繊維を今までは無視してきたことも,結果の説明が困難である理由である可能性もある.今後取り組むべき課題である. 本報告の細胞磁気計測では,微小繊維や微小管が細胞内の運動,具体的には磁性粒子を含んだ食胞の運動に関わる様子が,過去の磁気計測より明確に現れた.それは主に細胞内運動のエネルギーの連続測定を行うようになってからである.この方法が,なぜ従来我々が用いてきた方法よりも,薬剤に対する反応の差が大きく出るなどの結果を生むのか,まだよく分からない.この点も今後の課題である.細胞内運動は細胞にとってきわめて本質的な重要性を持つものであるから,結果の解釈に当たって慎重さが求められる. 本報告ではわずかに触れただけであるが,血管内皮細胞の細胞膜をそれに接着させた粒子で回転の捻りを与える実験は,細胞膜と細胞骨格との関連を調べる面白い方法だと考えられる.
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