研究課題/領域番号 |
12710006
|
研究種目 |
奨励研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
中国哲学
|
研究機関 | 甲子園短期大学 |
研究代表者 |
神林 裕子 (久米 裕子) 甲子園短期大学, 文化情報科, 専任講師 (10310749)
|
研究期間 (年度) |
2000 – 2001
|
研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2001年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2000年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 日本朱子学 / 懐徳堂 / 中井履軒 / 元代経学 / 元代朱子学 / 元代四書学 |
研究概要 |
本研究は、元代の朱子学、特に元人の経書研究に着目し、朱子本来の経書解釈を元人がどのような形で継承し、後代あるいは日本にいかなる影響を及ぼしたかについて検討することを目的としている。今年度は、朱子学の日本における展開について検討するべく、懐徳堂朱子学派の思想を取りあげて研究を行った。 懐徳堂学派の学問的特色は、一つには『中庸』を重視し、「誠」を中心とする道学を形成した点にあるが、もう一つには「格物窮理」を重んじた点にある。人間の認識の可能性を否定し、客観的世界の不可知性を説く徂徠学派への批判として、五井蘭洲は「実知・実見」の概念を持ちだし、経験が認識の重要なポイントとなるとした。この蘭洲の学風は、弟子の中井竹山・履軒に受け継がれ、懐徳堂学派における西洋科学受容の基盤となった。中国においては儒教と洋学は反発することが多かったのに対し、日本では親和関係をとる儒者が多かったのは、理の観念の経験主義的側面が強調されたためであり、これは日本朱子学の一つの特徴とも言われる。 そこで、懐徳堂学派の中でも、膨大な経学研究成果を遺した中井履軒について、その「格物窮理」の精神を具体的に見ていくため、履軒の経学に関する著述だけでなく、自然科学の分野に関わる資料、すなわち、『天図』『方図』『潮図』等についても調査を行い、解題を作成した。懐徳堂学派の自然科学、特に宇宙論に関しては、履軒の弟子である山片蟠桃が著した『夢の代』が地動説を説いたことがよく知られる。この蟠桃の前段階とも言うべき履軒の宇宙論の江戸時代における位置づけを明らかにするため、その時代背景や江戸中期における天文学研究について考察を加えたところ、履軒が単なる理念として「格物窮理」を唱えたのではなく、「格物窮理」の精神に基づき、実在としての宇宙を把握しようとしていたことが分かった。
|