研究概要 |
平成13年度は,留学生の被援助志向性を考慮した援助プログラムを開発することを目的にした。具体的には,現在までに得られた調査結果の知見をもとにプログラムを開発し,留学生援助場面への応用可能性を検討するために,留学生受け入れ部門をフィールドに執筆された論文の文献研究および,5大学の留学生センター指導部門教官に面接調査を行った。 その結果,被援助志向性を考慮したプログラムとして,(1)留学生援助のための留意点,(2)被援助志向性を考慮した関わりの2点が明らかになった。(1)留学生援助のための留意点では,留学生は勉強や住居,経済の現実的な問題にかかわる領域で援助する必要があること,留学生が来談した場合,彼らの訴える問題は日本人学生よりも深刻である可能性があることが明らかにされた。 (2)被援助志向性を考慮した関わりでは,留学生の被援助志向性を高めるためには,ソーシャル・サポートを積極的に供給しながら,呼応性への心配に配慮することが大切であることが指摘された。呼応性への心配に配慮する方法として,次の2点が考えられる。まず,第1点目は,留学生の入学時のオリエンテーション・プログラムで,利用できる様々な援助資源を紹介し,その利用価値を認識してもらうことである。第2点目は,留学生を援助する際に,呼応性への心配が高いと思われる留学生の場合は,まず,解決できる問題を優先し,援助の効果を留学生自身に認識してもらうことである。しかしながら,ソーシャル・サポートと被援助志向性の関連が循環的であること考えると,留学生の被援助志向性が低くても利用できる援助システムを開発することが必要である。この点はインターネットなどを利用した相談システムが一部の大学で実施されているので,これを被援助志向性という視点からもう一度検討する必要がある。
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