研究概要 |
子どもの社会性をいかに高めるかは、現代の学校教育を考える上で中心的な重要性をもつ問題である。近年の動機づけ研究では、社会的コンビテンスの中でも、特に他者に対する協力的、援助的志向である社会的責任目標(Social responsibility goal)が、教室における幅広い適応に重要な役割を果たしていることが示唆されてきた(Juvonen&Wentzel,1996;Wentzel,1998)。本年度の研究においては、このような子どもの社会的責任目標に焦点を当て、主に以下の3つの研究を行なってきた。 1.社会的責任の発達に関する文献研究 子どもの社会的責任に関する研究は、欧米を中心に近年盛んになされてきた。しかし、この領域について網羅的に文献を検討した研究はほとんどない。そこで、近年の社会的動機づけ、社会的コンビテンス研究を中心に、主な文献をレビューし、社会的責任の発達に関する研究知見を整理した。 2.社会的責任目標と友人関係、学業達成の関連 社会的責任は、他者に対する援助志向や社会的な期待や規範への遵守志向であり、教室における円滑な対人関係を築くための重要な要因である。そしてそのよう積極的な対人関係は、子どもの動機づけや適応を高める促進因となりうる。本研究では、児童の社会的責任目標、教室内の友人関係、そして学業達成との関連について、実証的に明らかにすることを試みた。その結果、社会的責任目標が、友人との積極的な相互作用を促すことで学習への動機づけや学業成績にも積極的な影響を及ぼしていることが示された。その成果は、日本性格心理学会発行の性格心理学研究に掲載予定である。 3.児童の社会的責任促進のため発達援助 小学校教員17名に対して半構造化インタビューを行い、児童の社会的責任を促進するための指導行動について検討した。本研究課題において平成12年度に実施された研究成果が、教育心理学フォーラム・レポートに発表された。
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