研究概要 |
本年度の目的は摂食障害患者における対人間係性障害を評価するためのアセスメントバッテリーを開発し,当科における入院認知行動療法の効果の検討を行うことであった.【研究1】摂食障害患者を対象に「どのような対人場面でストレスを感じるか」を自由記述によって求めた.その結果,代表的な4つの場面が選択され,対人場面におけるセルフ・エフィカシー尺度が作成された.【研究2】摂食障害患者群と健常群を対象に質問紙調査を行った.調査の内容は(1)社会的スキル尺度(菊池,1988),(2)対人場面におけるセルフ・セルフ・エフィカシー尺度,(3)知覚されたソーシャル・サポート尺度(久田他,1989),(4)家族や友人との関係に対する満足度尺度であった.健常群と臨床群を比較した結果,摂食障害群は健常群よりも社会的スキルや対人交渉場面に対処できるという自信に乏しく,対人関係に満足を感じていないことが示された.知覚されたソーシャル・サポートについては母親から高く,一方,父親や友人からのサポートを低く知覚していることが示された.【研究3】当科における入院治療を終結した神経性食欲不振症制限型患者6名,神経性食欲不振症過食排出患者2名,神経性過食症排出型3名を対象に,研究2で用いた質問紙に加え,集団主張訓練場面および病棟内における社会的スキルについて行動評定を行い,治療前後で比較した.その結果,摂食障害患者の社会的スキルは入院治療によって改善し,また,対人交渉場面に対処することに対する自信や対人関係の質も向上することが示された.
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