本研究では、以下の順で実態調査及び理論研究を行った。それぞれの研究概要と研究実績は以下の通りである。 (1)90年代のフランスの都市底辺層を担い手とする社会運動の発端となった「住宅への権利運動」が編み出した住宅占拠という運動の戦略が広く市民も動員することができた理由を、公共空間として占拠空間を位置づける論考を行った。 (2)「住宅への権利運動」が伝播し、「雇用占拠」など同様に占拠を戦略とする運動が広がったが、なかでもパリを中心として「社会的ヨーロッパを求める失業者の社会運動」に対する社会調査により、内に閉じこもりがちな失業者たちが法律をかえるまでに影響力をもちえる運動が形成される過程について論文を執筆した。 (3)社会的排除をめぐる運動が、非正規滞在移民の滞在許可証を求める運動と連携しながらも、非正規移民の独自の運動が発展した背景を、運動の担い手となった移民への聞き取り調査により考察し、論文を執筆した。 (4)今後、都市底辺層を担い手とする運動を比較社会学的に考察するための作業として、北米、日本それぞれにおいて、ホームレスや移住労働者の運動の展開について社会調査を行い、論文を執筆した。
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