研究概要 |
監視は近代社会を構成する制度的次元の1つである.現代社会を読み解くのに監視はキー概念となるという認識のもと,「監視社会」論を展開することを研究目的とした. まず,ミッシェル・フーコー,アンソニー・ギデンズ,クリストファー・ダンデカー,デヴィッド・ラィアン,ウィリアム・ボガードらによって展開された先行研究を検討し,監視社会に関する理解を深めた. そうした先行研究を踏まえ,「監視社会」論の射程を拡張していくために,特に,以下の点について検討した. 第一に,監視の歴史について考察した.監視は近代以前のかなり古くから存在しているが,近代における監視はそれ以前のものとは様相を異にしている.私たちが,日常生活のあらゆるところまでさまざまな形で監視されていることを確認した. 第二に,監視のテクノロジーについて調査した.監視はテクノロジーに依拠している.テクノロジーの進展とともに監視は高度化している.とりわけ,コンピューターやインターネットなど,現在の情報処理技術の飛躍的な発展が,監視のあり方を大きく変貌させている.そうした監視テクノロジによって,私たちの日常生活や,主体としての私たちのあり方まで変容させられていることを明らかにした. 第三に,監視と国民国家の関係について検討した.国民国家は,多くの国民の監視が可能になってはじめて成立したことを明らかにした. 最後に,監視とプライバシーの問題について検討した.私たちが日常のいたるところで監視されているとするならば,私たちのプライバシーはいかに守られるべきであるのか.理論的,規範的に考察した. 以上が研究実績の概要である.日本社会について,監視社会論という観点から分析することを最終的な目標として設定していたが,そこまでは到達しなかった.今後の課題としたい.
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