本研究の課題は、高齢の親とその子どもの関係が、居住関係及び扶養関係をめぐってどのように組織されていくのかを、経験的データを収集し分析することを通じて明らかにすることである。本年度は研究の主要部分を構成する質的データ収集に先立ち、国勢調査の地区別データを用いた統計分析と郵送法によるスクリーニング調査を実施するとともに、質的データ分析にかんする調査方法論の検討を行った。 本研究は愛知県を調査対象地とするため、スクリーニング調査を実施する上で必要な、高齢者の世帯形態に関する県下市区町村の地域特性を分析した。1995年国勢調査非公開表を利用し、愛知県下の103市区町村(名古屋市は各区を単位とする)について、高齢者が子どもと別居する割合と他の地域特性(高齢化率など)との関連を分析し、県下市区町村の別居割合は第1次産業人口割合、女性雇用者割合等とゆるやかな相関を持つが、それらでは説明できない地域的多様性も見られることが明らかになった。 上記の結果をもとに、郵送調査地点として愛知県下の2市を選んだ(A市、B市とする)。県北部のA市、県南部のB市における、高齢者が子どもと別居する割合はそれぞれ40%、21%であった。A市については選挙人名簿、B市については住民基本台帳から、向老期である60歳以上79歳以下男女それぞれ550名ずつを抽出し、合計1100名について2001年2月に郵送法によるアンケート調査を実施した。回収率は目標値の60%を上回り、およそ78%であった。結果は現在入力を進めており、記入もれや論理エラーを含むケースを除外した有効回答率を計算中である。これら回答者について、子どもと同居するケースと別居するケースとに層化した上で、質的インタビューをまもなく実施する予定である。
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