2001年度は引き続き関家文書の分析をすすめた。その結果、(1)近世前期の松本藩組手代は、小物成・運上金徴収に大きな役割を負っており、「蔵込」を行うなど庄屋とはことなる独自の職掌・職権を有していたこと、(2)夫役割賦の基本数値となる屋丁役の運用に深く関わっていたこと等が改めて確認された。夫銭など、(1)に含まれるもののいくつかは、(2)の夫役に由来するものであり、大庄屋行政区を単位にした支配は本来的には、高支配=土地にもとづく領民把握とは性格を異にする、人(あるいは役家)別把握にもとづく支配であった。大庄屋行政区を単位にした屋丁役の設定は、同時に大工等の諸職人と百姓との区分を意味したことから、組手代の支配には、「身分」の問題が密接に関係することとなった。松本藩では貞享・元禄期頃から大庄屋行政区の地域的一体性が変化してきており、その動向は上記の問題と無関係ではない。今後は組レベルにおける身分と状態的存在との関係(再編)を、領主支配政策との関わりで明らかにする必要がある。 また2001年度は組下の庄屋文書として、旧潮沢村隠岐家文書の目録整理・調査をおこなった。同文書は昭和28年に仮整理がなされているが、未整理であった状文書を対象に目録作成をおこなった。そして、享保期の大福帳などを分析することによって、一般庄屋層の麻績組地域における経済的地位を明らかにした(なお、隠岐家文書の整理作業は今後も継続しておこなう予定)。
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