研究課題/領域番号 |
12710202
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (00272774)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2001年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | アナーキスト / アナーキズム / 肖像 / カリカチュア / 市民社会 / 図像 / 欧米 / 犯罪 / アナーキズト |
研究概要 |
本年度は、これまでに調査・収集した文献・史資料を分析した。その結果、まず19世紀にベルリンで発行されていた絵入り週刊誌『クラデラダーチュ』および同時期にニューヨークで発行されていた絵入り新聞『ハーパーズ・ウィークリー』、さらに同誌に掲載されたカリカチュアを描いた画家T・ナストに関しては、わずかながら先行研究が存在していたこと、両誌が市民層の見解を代表していたことがわかった。そこで、収集した史資料のうち、以上の二誌を主な分析の対象に絞ることに決定し、両誌上、および、ロンドンで発行された、同じく市民層の見解を代表し、すでに多くの先行研究がある『パンチ』誌上に掲載されたアナーキスト像の検討を進めた。他方、犯罪人類学の始祖C・ロンブローゾによって描かれた、犯罪者としてのアナーキスト像に関する分析も進め、彼の学説が形成された歴史的・社会的背景に関して検討した。その結果、対象とした時期に現われたアナーキスト像は、嘲笑と嫌悪の対象として描かれていたこと、それらアナーキスト像には、社会の周縁部に属する下層民のイメージが投影されたことがわかった。また、犯罪者としてアナーキストが描かれる場合、市民社会側から異質なものと見なされ、危険視されていた諸要素(貧困・感情的性格・無知など)がアナーキスト像として表現されていたことがわかった。さらに、アナーキストを含めた社会の周縁部に属する下層民が、市民社会にとって脅威であるという認識が示されていたという点から、同時期の市民社会の不安や危機意識が、アナーキスト像を通じて表象されていたという結論を得、これを研究報告と論文において公表した。これにより計画当初の目的を果たしたが、全ての図像を同時代の文脈と結ぴつけて解釈するという作業、アナーキストの「実像」を詳細に検討するという作業、「異常」の対極にある「正常」の概念に関する検討、市民社会の自己認識の解明が今後の課題となった。
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