研究概要 |
本年度は,(1)前年度の作業の成果を論文として公表すること,(2)研究の深化に向けて新たな史料収集に着手すること,が主な作業となった。 (1)前年にひきつづき、1860年の砂糖関税法(5月23日法)の制定をめぐる政府・議会での論議と院外圧力(ボルドーをはじめとする商業都市)を分析することによって、フランス第二帝制の権力構造を解明することをめざした。この成果は、博士論文(2000年)を刊行化する作業の過程でもりこまれることとなり、貴会科学研究費補助金(研究成果公開促進費)学術図書(課題番号135112)の支援のもと、『フランス第二帝制の構造』(九州大学出版会)として公表される運びとなった。 (2)しかしながら、上の作業は史料面でかなり制約のあるものであった。とりわけ中央レベルでの立法プロセスをめぐる諸問題を検討するにあたっては史料不足が痛感された。したがって、上記(1)の作業と並行しつつ、パリの国立文書舘(Archives Nationales)での史料収集もまた必要不可欠な作業であった。ここで収集した史料はいまだ分析中であるが、議会委員会レベルでの議事録には「権威帝制」下における皇帝と議会のあいだの理念的対立という、私が重視する権力構造上の歴史的特質が鮮明に表れており、このことは第二帝制史研究を大いに進展させる可能性をもっている。この分析結果は、論文として公表すべく原稿を準備中である。 今後は、中央レベルでの分析を補完するため、ボルドーという地方都市に焦点をあて、「国民主義」の時代の地方と中央をめぐる諸問題にとりくみたいと考えている。これについては、新たに「近代フフンスにおける地域的個性の持続と変容」という研究課題のもと、貴会科学研究費補助金・平成14年度若手研究Bを申請中である。
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