研究課題/領域番号 |
12710223
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
国語学
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高山 知明 金沢大学, 文学部, 助教授 (20253247)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2001年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 濁音 / 音韻 / 前鼻子音 / 謡曲史料 / 仮名遣書 / 過剰訂正 / ザ行音 / 四つ仮名 / 謡曲資料 |
研究概要 |
昨年度より実施の文献調査を継続しながら、本年度はその分析のほうにより重点を置いて研究を進めた。その結果、濁音の鼻音要素について解明する上でも、これらの文献の成立背景をいかに考えるかが重要であることが明らかとなった。 具体的には、謡曲資料・仮名遣書に掲げられている発音注記の背景に、どのような言語実態があるのかという点である。従来、その発音注記は、古い発音を守るために記されたものと見なされてきた。しかし、なぜ、当時、細かな発音の違いに、わざわざ注意が向けられたのかを問題にするならば、従来の見方はあまりにも単純に過ぎることがわかる。本研究は、それを指摘した上で、さらに、ザ行子音をはじめとする濁音の実態、およびその変化がどのようであったかについて、とくに、これまで見逃されていた点を中心に明らかにした。 従来の最大の問題点は、話者が自分の発音を意識する際に、しばしば生じるはずの過剰訂正(hypercorrection)の可能性をまったく考慮していないことである。そもそも細かな発音の違いがいちいち意識され、それが文献に記されること自体、特殊な条件下でなければ起こりえないことであるが、その認識を持った上で、これらの文献は扱われていなかった。過剰訂正は、実際には変化が生じなかったところまで、「誤った形」として話者が感じることによって生じる。現在の我々が、そのことを見逃し、文献中の記述が直接に言語変化を反映するものと見なしてしまうと、誤った日本語史をそこから導き出すことになる。それゆえ、過剰訂正が生じる言語的背景を探ることは大変重要である。これによって、誤った言語史を正していくことが可能になる。本研究を通じて、そのことを具体的に明らかにした。この点は、言語史研究の方法論に対する、重要な問題提起となった。
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