研究概要 |
1.本研究は、文学史をメディア史との連関において考察する、近年のドイツでの研究動向に連なるものであるが、ドイツ語圏と日本との比較の視点を取りいれている。 2.研究の本論の部分は、時代を順に追って論ずるのだが、今年度はとりわけ、二十世紀について多くを明らかにできた。また、十八世紀から十九世紀にかけての研究成果で、今年発表の機会を得たものもあった。具体的には、以下を明らかにした。 (1)江戸時代の日独における印刷技術は決定的に異なり、その異なった印刷技術の上に両文化圏の文学のパラダイムが成り立っていたのだが、そのパラダイムは、どちらの文化圏においても、十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて、新メディアの導入によって崩れた。その崩れ方には共通性と相違とがあった。 (2)相違点から言えば、「書く」という行為の場に現れた新メディアは、ドイツではタイプライターであったのに対し、日本では活字であった。(活字は、ドイツでは旧メディアであった訳で、活字の文学に対する意味合いが全く対照的である。) (3)ところがその異なったメディアは、能記の所記に対する優勢という新たな文学パラダイムを導く、という同じ効果を生み出した。 以上の研究成果は、国内で二回、ドイツで一回の口頭発表・講演で披露した。 ・「活字とゲーテ時代の文学」(2001年6月8日・東京ドイツ文化センターで行われた日本ゲーテ協会シンポジウムにて) ・"Matthias Claudius und Japan"(2001年11月7日・Ludwigs-Maximihans-Universitat Munchen,Department fur Germanisik,Komparatistik und Nordistikにおける講義の一回分を担当したもの) ・"Uber die Einfuhrung des westlichen Kultur-Begriffs in Japan"(2002年3月22日・日本独文学会文化ゼミナールにて)
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