研究概要 |
(1)言語現象の記述 前年度の研究成果を踏まえ、今年度は、日本語・ロマンス諸語・英語を比較しながら、その共通点及び相違点を整理するために、以下の項目についてのデータの収集を行った。 (a)叙述の役割(主題構文、関係節、tough構文を中心に) (b)複合動詞(使役構文、再構成化動詞など) また、これらの項目に関する先行研究を整理し、問題点や課題を明らかにしながら、批判的な精査を行った。 (2)理論的考察 前年度は、空範疇の分布とその特性について、屈折要素(INFLあるいはTensc)の役割、叙述の役割などの現象を基に、日本語とロマンス諸語の相違点を説明するべく、屈折要素がもつ特性として[±predicateを定め、その値の違い(日本語は[+predicate]、ロマンス諸語は[-predicate])、すなわちパラメターを仮定した。今年度は、このパラメターをより精緻なものにし、上記の言語現象についてどのような説明ができるかという考察を行った。その結果、このパラメータに[±argument]という特性も加えることによって、日本語のTenseが[+predicate,-argument]、ロマンス諸語は[-predicate,+argument]、英語が[-predicate,-argument]という区別をつけることができ、それによって(1b)の複合動詞に関する日本語とロマンス諸語の共通点、及び両者と英語との相違を説明できることが明らかになった。
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