研究課題/領域番号 |
12720022
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
国際法学
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
洪 恵子 三重大学, 人文学部, 助教授 (00314104)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2001年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2000年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 国際警察協力 / シェンゲン協定 / インターポール / ユーロポール / 国際司法共助 / 犯罪人引渡 / 双方可罰性 / 法執行協力 / 国際組織犯罪 |
研究概要 |
私の研究課題は、「国際警察協力の構造と法機能」である。従来、捜査機関の協力は外交当局を経由した間接協力が主流であったのだが、欧州においてユーロポールが誕生したことにより、新たな展開を迎えているのである。今年度は、国際警察協力の発展を支えている欧州を中心とした新しい国家実行について検討し、国際警察協力の構造と法機能を明らかにすることに努めた。 欧州は、戦後国際テロリズムの増加に悩まされ、このような事態に対処するために各国の政府間で対話と協力の場が模索された。イギリスが欧州共同体(EC)諸国の参加を求めて、1976年にトレビグループが創設された。そこでは、麻薬・重大犯罪・サッカーのフーリガン対策などに協力の対象を広げた。このトレビグループこそ上記のユーロポールの母胎となるものであった。さらに国際警察協力概念成立にとって重要なことは、1992年以降、欧州大陸の国境を一定の目的で廃止するシェンゲン協定が結ばれたことである。国境を越えて自由に人・物が往来することになれば、犯罪も国境を越える。そこで、国境を越えて展開される犯罪を取り締まるために、各国警察も国境を越えて任務を達成する必要が認められた。ここでは、警察が「直接」協力する体制(越境追跡等)が整えられたのである。研究を進めるうちに、国際警察協力が二つの意味合いで用いられていることを発見した。つまり通常の国家間の協力手続(外交ルートを介した)の一部として警察が一定の役割を果たす「広義の国際警察協力」と各国の警察が直接に協力する「狭義の国際警察協力」の二つである。この両者はしばしば混同して用いられているが、とりうる措置も性質も異なっているのであり、区別して用いる必要がある。さらに後者の狭義の国際警察協力についても、国際刑事警察機構(インターポール)と先のシェンゲン協定における国際警察協力には大きな違いがある。インターポールと違って、シェンゲン協定における警察協力は執行措置も行うことができるからである。 最後に、研究計画で示した「今日の国際警察協力概念はEUという政治統合の中で理解されるべきと言う通説は果たして妥当か」という問題点を検討したが、二年間の研究により、国際警察協力概念は多様であり、一括して評価できないこと、また最も先鋭的なシェンゲン協定における警察協力を見てみれば、EUの政治統合のプロセスとは違う文脈で発展したことがわかった。今後、国際警察協力はさらに発展することが予想されるが、国際警察協力の実体は、様々な主体が、それそれ微妙に異なる目的の元に発展させてきた制度の集合体であるということに注意する必要がある。そのような理解を経た上で、日本も新しい国際警察協力に、より効果的に参加することができるだろう。(なお、国際警察協力の発展の過程を研究会で報告し、論文にまとめた(「欧州警察協力」研究会「欧州警察協力の新展開(一)」(上智法学論集第45巻第1号、洪 恵子担当「二国際警察協力の概観」78-100頁)。
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