研究概要 |
平成13年度の目的は,12年度の分析を進展させ、基礎研究の応用(とくにコンピュータを使用した解析)を目指すことであった.また,基礎研究の成果発表を国内外でおこない,それに関する討論・意見交換をおこなうことでもあった. 第1の点については,コンピュータとインターネットを利用した資産市場の実験的手法による研究をおこなった.筑波大学においていくつかの予備的な市場取引実験を行い,またそれを改良したシステムを用いて香港科学技術大学において比較対照する実験をおこなった.被験者はいずれも大学1年生レベルの学生であったが,香港の実験においては実験的資産市場での価格形成は,少なくとも今回得られたデータの上では,筑波の場合に比べはるかに安定的に機能したことが興味深い発見であった.ただし,実験セッションは1度しか行なえなかったため,論文作成にはデータの信頼性を高めるための追加的実験が必要であると考えられる.しかしながら,実験を通じて被験者の学生たちは現実の市場における価格形成と取引の本質的な理解を得ることができ,啓蒙的かつ教育的効果は非常に高かったと確信している. 第2の点では,イタリアのベニス大学,そしてイギリスのロンドン社会経済大学を訪問し,当地の研究者たちと意見交換を行い,情報収集を行なった.その結果,特に内生的な価格形成の理論的フレームワークとして,ベイジアン・ゲームの有用な拡張方法のアイディアを得たのがおおきな成果だったといえる.来年度中にも論文として成果を発表する予定である.
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