研究概要 |
コピュラは1次元周辺分布関数を多変量分布関数と結びつける役割を果たす関数である.このコピュラを用いた多変量モデルは確率変数間の様々な依存関係をモデル化する道具として有用であり,近年保険理論やファイナンスでのリスク管理において用いられている.このコピュラ・モデルは研究実施計画で述べた変換モデルの一種であり,セミパラメトリック・モデルの1つのクラスである. 本年度の研究では,前年度の研究を継続し,コピュラ関数に関する統計的推測の問題を考察する一方で,そのファイナンスへの応用を模索した.コピュラの族としてパラメトリックなものを特定し,周辺分布は任意としたセミパラメトリックモデルにおいて,有限次元パラメータを推定する方法として2つの方法を検討した.まず,前年度に得られた経験コピュラの確率1での漸近表現を改良し,その系として汎関数の分布収束定理を示した.そして,それらに基づき,順位近似M-推定量の一致性,漸近線形性,漸近正規性について必要最小限の正則条件を求め,その下での厳密な証明を与えた. 2番目の方法として考えたのは最小距離推定である.この方法は頑健性をもつことで知られており,実際に我々のモデルにおいてもそれが証明された.具体的には,最小距離汎関数の微分可能性が通常の正則条件の下で成立つこと,真のコピュラが仮定されたパラメータ族に近いときには最小距離推定量がその被推定値に局所一様収束すること,そして局所一様漸近正規性を示すことができた. コピュラのファイナンスや保険理論への応用は多岐に渡っている.我々の研究課題と最も関連の深いものではいくつかの関連企業の倒産時刻間の従属性をコピュラを用いて捉えるというアプローチであるが,これについて最新の研究をサーベイし,研究会で報告を行った.
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