当該研究では、大別すると2つの研究成果を得ることが出来た。ひとつは、知識ベース視角に基づいた、研究開発活動の測定を実施したことである。知識ベース視角は、これまでの資源ベース視角の戦略論とは異なり、知識の創造に主眼を置いた研究であり、我々の主たる研究領域である研究開発活動に対するインプリケーションに富んでいるが、定量的な研究はいまだ少ないのが実情である。本研究は、そのうちのひとつである点に意義があると思われる。 本研究では、先行研究のレビューを通じて、多様性のマネジメント、意図に基づく革新的試行、当事者を取り込んだ内的革新、外部の情報源の活用、技術的機会の活用、という5つの測定次元を設定し、それぞれ複数の測定項目を作成した。この調査票を用いた調査はすでに実施され、現在分析を進めているところであり、近日中に論文として発表する予定である。 研究成果の2つ目は、研究開発活動に従事する研究開発従事者の評価に関する知見が得られたことである。研究開発活動という、不確実性のきわめて高い活動において、評価活動が如何に困難かつ重要であるのかは、これまでの先行研究でしばしば指摘されてきた。本研究では、人的資源への評価が、被評価者に対してどのようなプロセスで影響を与えるのか、業績向上へ結びつくような影響を与える条件とは何かを明らかにすることが出来た。具体的には、モチベーション理論をもとに前者を明らかにし、公平性に関する研究をもとに後者を明らかにしている。これらをもとにした調査もすでに実施し、現在論文を作成中である。
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