研究概要 |
本年度は大きく2つのテーマについて研究を進めました。一つは,前年度の日本会計研究学会において「条件付監査意見に記載された未確定事項の類型化」というタイトルで報告した内容について,とくにゴーイング・コンサーン問題に関する未確定事項に焦点を絞り,学会時および学会終了後にいただいた意見を検討して論文をまとめ,学会機関誌に投稿いたしました。この論文は,ゴーイング・コンサーン問題を「リスク」という概念から整理し',そしてこの概念に基づいて「ゴーイング・コンサーンにおける不確実性」や「ゴーイング・コンサーンに対する著しい疑念」を説明しています。 そしてもう一つは,前年度に収集した大量の事例を整理・分類し,その結果を論文にまとめて学内の紀要に投稿いたしました。収集した事例は,1930年代初頭から1963年までにおいて,アメリカ企業が公表した監査報告書のうち,限定付適正意見が付されたものです。この時代は,まだ意見限定のための修飾句が基準で詳細には規定されておらず,したがって多様な形の限定意見が付された監査報告書が作成されていました。論文の作成にあたっては,この時代における監査報告基準はどのようなものがあり,どのような形の規制を行っていたのかについて,当時の文献を渉猟し時代の流れに沿って整理しました。それから,この時代において実際に公表された限定意見付の監査報告書について,どのような問題を対象としていたのか,どのような修飾句をもって意見を限定していたのか,さらに「条件」付監査意見はどのような問題を対象としたのか,また未確定事項についてはどのような側面を「条件」としたのかについて整理・分類いたしました。
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