研究概要 |
可換環A上のイデアルIがI=JK(J, KはAのイデアル)ならば,J=AまたはK=Aとなる性質を持つときIは単純イデアルとよばれる.Zariski-Samuleによれば,2次元正則局所環(A,m)上のm-準素な整閉イデアルは,m-準素・整閉・単純イデアルの積として一意的に表すことができる.その後,この方面の研究はLipmanによって環が有理特異点を持つ場合に拡張されたり,Hunekeによってm-準素・整閉・単純イデアルと付値環との一対一に対応に関する深い理論へと発展していった. しかしながら,2次元正則局所環上のm-準素イデアルの中でも「如何なるイデアルが整閉な単純イデアルとなるか?」という問題についてexplicitに述べている文献はないように思える.また,m-準素・整閉・単純イデアルの有する特徴として,そのRees環が如何なる性質を持つかという問題はシンプルにもかかわらず,とても重要なものに思えるのだが,このような問題については未だ提起されたことはないようである. この問題について考察して次の結果が得られた. 命題1 (A,m)を2次元正則局所環とし,x,yを正則パラメータ系とする.このとき,互いに素な整数m,n>0に対して(x^m,y^n)の整閉包はm-準素・整閉・単純イデアルである.環が次数付環である場合には,この命題の逆も正しい.すなわち,次の主張が成り立つ. 命題2 A=k[x,y]を体k上の多項式環とし,イデアルIはA内の単項式で生成されたイデアルとする.もしIが(x,y)-準素で整閉な単純イデアルならば,互いに素な整数m,n>0が存在しIは(x^m,y^n)の整閉包となる. これらの結果から,ひとつの応用として次の結果が得られる. 定理 IをA=k[x,y]上の(x,y)-準素・整閉・単純なモノミアルイデアルとする.このとき次の2条件は同値である. (1)IのRees環をR(I)とするとき,射影スキームProjR(I)はGorensteinである. (2)IのorderはIである.すなわちIは(x,y)^2に含まれないイデアルである.
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