研究概要 |
本研究は,双曲型結び目のデーン手術により,非双曲的な多様体を生じる場合の分析を目的としている。双曲型結び目は,3次元球面内の結び目において最も一般的なクラスであり,そのデーン手術によって,有限個の例外を除いて常に双曲的多様体を生じることが知られている。従って,現在のデーン手術研究の中心課題は,非双曲的多様体を生じる例外的デーン手術における現象の分析といってよい。 本年度はまず,クラインボトルを生成する例外的デーン手術に関する研究を行い,そのような手術を定めるスロープに対して,結び目の種数を用いた上限を与えることに成功した。特に,双曲型結び目に対しては,その種数の4倍が上限であり,この評価が最良であることを示す例の存在もまた示すことができた。また,結び目の向き付け不可能種数との関連として,向き付け不可能種数2の結び目に対して,結び目を境界とする穴あきクラインボトルの境界スロープが高々2種類しかなく,それらの距離は4か8であることを示した。実際,距離が8になるのは8の字結び目に限ることも示し,距離が4になる例を無限個構成した。 次に,絡み目の例外的デーン手術の典型として,非自明な手術によって3次元球面を再び得る場合がある。絡み目の成分が互いに異なる双曲型結び目であり,絡み目自体のトンネル数が最小値をとる(成分数マイナス1という値)ものを無限個構成した。特に,2成分絡み目の場合には,絡み目自身も双曲型で実現した。上記2つの結果は,国際学術雑誌より発表予定である。
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