研究概要 |
報告者は、代数的確率論(=非可換確率論)の枠組みにおいて、独立性の概念を分類することを試み、以下の結果を得た。 1.準普遍積としての独立性概念の分類.R.Speicherは、独立性の概念を、(1)結合法則;(2)混合モーメントに対する普遍的計算規則の存在の2条件を要請することにより「普遍積」として定式化し、「普遍積」はちょうど3つだけ存在することを証明した。しかしながら、実は、「普遍積」の概念にはある種の可換性条件が暗に仮定されている。報告者は、この可換性条件を落とした概念である「準普遍積」を導入し、これの分類定理を与えた。代数的確率空間の「準普遍積」としては、テンソル積、自由積、ブール積、単調積、反単調積のちょうど5つのみが存在することを証明した。 2.自然積としての独立性概念の分類.Ben Ghorbal-Schurmannは、Speicherの「普遍積」の概念を、代数的確率空間の圏における積であって、4つの公理系を満たすものとして、可換図式を用いて再定式化し、分類定理を緻密化した。報告者は、Ben Ghorbal-Schurmann流の定式化による「普遍積」の概念を弱めたものである「自然積」の概念に関し、その分類定理を与えた。代数的確率空間の自然積としては、テンソル積、自由積、ブール積、単調積、反単調積のちょうど5つのみが存在することを証明した。 1,2のいずれの結果も、非可換確率論においては、ある種の普遍性を有する独立性概念は、ちょうど5つしか存在し得ないことを証明したものである。この結果は、量子確率論(=非可換確率論)の基礎に関する重要な事実であると考える。1の結果をまとめた論文は、Infinite Dimensional Analysis, Quantum Probability and Related Topicsに掲載予定である。また、2の結果をまとめた論文も投稿済みである(現在査読中)。
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