研究概要 |
水のような非圧縮粘性流体において、駆動力のようなデータの無限遠方での減衰に異方性があるとき、即ち減衰冪が方向によって異なるとき、解の減衰の異方性を導いている。 減衰冪が方向によって異なる関数は、通常のL^p空間上で考えることはできず、直交座標x=(x_i),i=1,2,・・・,nにおいて、iよってpが異なるルベーグ空間上での議論を試みた。この空間はBenedek A.,Caldero^^'n A.P. & Panzone R.,Convolution operators on Banach space valued functions,Proc. Nat. Acad.Sci. USA 48,356-365(1962)によって導入され、mixed normを持つ空間と呼ばれている。この空間はその後、とりわけロシアの研究者らによっていわゆるBesov空間への応用として理論的な発展をなされていったが、具体的な問題への応用としては注目されることはなかったようである。 非圧縮粘性流体の基礎方程式であるNavier-Stokes式は非線形であるが、非線形性を直に扱う有効な手法はこれまで発見されておらず、線形問題の摂動として扱われているのが現状であり、ここでもそのように扱う。まず線形問題に関する主要な命題、すなわち、ストークス方程式の解の先験的評価、空間微分、時間微分からなるソボレフ空間における埋め込み定理、ヤングの不等式などの証明をおこなう。解の減衰冪を導くために、方程式に荷重関数をかけ、荷重関数をかけられた解を荷重関数をかけられたデータによって評価する。次に荷重関数をかけられた非線形項の評価に取り組む。この証明は、Hilbert変換にあらわれる積分核のような、いわゆる特異積分核のmixed normを持つ空間の上での評価(Benedek A.,Caldero^^'n A.P. & Panzone R.,Convolution operators on Banach space valued functions,Proc. Nat. Acad.Sci. USA 48,356-365(1962))に基礎をおく。 荷重関数として、データの減衰と解の減衰の差が等方的となる場合と、等方的とならない場合も扱うことが可能である。後者の場合、これは減衰に対して支配的なGauss核が異方的な振る舞いをするのではなく、評価が異方的であるに注意が必要である。近年、Navier-Stokes式の解の減衰冪評価の研究が盛んであるが、これはS.Takahashi, A weighted equation approach to dacay rate estimates for the Navier-Stokes equations, Nonlinear Analysis,37(1999)751-789.に端を発するものであり、方程式に荷重関数をかけるという手法もここで開発されたものであった。
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