研究課題/領域番号 |
12740119
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
天文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 朋治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助手 (10291056)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 銀河系中心 / 星間物質 / 中性炭素原子 / サブミリ波望遠鏡 / 超伝導素子 |
研究概要 |
私は1999年より、小型で可搬型のサブミリ波望遠鏡の開発に従事している。この望遠鏡は、中性炭素原子が放射する二本のサブミリ波スペクトル線(CI^3P_1-^3P_0 : 492GHz, 3^P_2-^3P_1 : 809GHz)による広域サーベイ観測を行うことによって、銀河系スケールにおける原子ガスの分布・運動・物理状態を調べることを目的としている。この望遠鏡の特長は、可搬型のため世界中のあらゆる優良観測サイトに持ち込むことが出来、しかも主鏡口径が18cmと小さい(HPBW=13'@492GHz)ので広い領域をサーベイするのに適しているところにある。 本研究課題の目的は、この可搬型18cmサブミリ波望遠鏡、特に受信機フロントエンド部分の大幅な改良によりその受信感度の飛躍的な向上を図り、中性炭素原子のサブミリ波スペクトル線による銀河系中心領域全体の観測を世界で初めて実現することにある。本研究課題の第二年度にあたる今年度は、初年度に開発した超伝導(SIS)ミキサ受信機を可搬型18cmサブミリ波望遠鏡に搭載し、2001年3月と9月の二度にわたって望遠鏡システム全体を南米チリのアタカマ砂漠パンパラポラ(標高4800m)に移設して、望遠鏡の立上げ作業およびテスト観測を行った。 3月の実験では天候不順に加え実験開始直後にAz軸駆動ギアが破損したため、立上げ作業はごく一部の機器に限られてしまったが、9月の実験では大きなシステム障害もなく順調に望遠鏡システム全体の立上げ作業を進めることが出来た。2001年9月末までのパンパラボラにおける作業進捗状況は以下の通りである。 [1]主鏡に固定した光学望遠鏡で恒星を追尾する事により、望遠鏡指向器差パラメータを決定した。 [2]9月晴天時の500GHz大気透過度を測定し、τ_<500>=0.5-0.9を得た。 [3]500GHz帯大気込みシステム雑音を評価した結果、T_<sys>=650-1000Kを得た。 [4]太陽および月からの500GHz連続波を検出した。 [5]太陽および月を追尾する事により電波軸指向器差パラメータを決定した。 [6]太陽の連続波の強度分布から、500GHzにおける望遠鏡のビームサイズをHPBW=15.3'±0.2'と決定した。 [7]月の連続波強度から、500GHzにおける望遠鏡のビーム能率を測定し、η_<moon>=0.56を得た。 [8]周波数スイッチ観測法により、大気オゾン輝線(491.95GHz, 496.25GHz)を検出した。 上記と平行して、中性炭素原子分布の比較の対象である一酸化炭素の銀河系中心領域における分布・運動について、野辺山宇宙電波観測所45m望遠鏡を使用して取得したミリ波輝線データの解析を進め、以下の新しい事実を見出した。 [1]銀河系中心分子雲複合体内に発見された分子ガスの超高速膨張シェル構造を発見した。 [2]銀河系中心ラジオアーク非熱的フィラメントに隣接する分子雲と膨張する空洞を発見した。 [3]銀河系中心領域の分子雲の統計的性質から、大部分が重力収縮に対して安定である事を見出した。 各々の結果は3本のジャーナル論文として今年度出版することができた。
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