研究概要 |
本実験においては、検査光そのものの位相変化を見ることと同時に、検査光と完全に同期した荷電粒子の発生源が必要不可欠である。昨年度の時点で、すでに薄膜を超短パルスレーザーで照射することにより、荷電粒子が発生していることは分かっていたが、どういう種類の粒子が、どれぐらい、どの方向に発生しているのか詳しい測定データがなかった。本年度は、まずそれらを突き詰めるために、様々な条件でより多くの照射実験を行った(Proc. 13^<th> Conf. on Accelerator Science and Technology, Osaka Oct. 2001)。現時点で分かっている結果として、薄膜に対して反射する方向(後方)には、最大エネルギーで1MeV程度までの10^7個/Sr程度の陽子が一様に放出され、薄膜を突き破って進む方向(前方)には、中性の粒子が放出されていることが判明している。この薄膜照射の実験と並行しながら、検査光の位相変化を測定するための予備実験を複数回行った。それらの実験では、位相変化を検査光の偏光状態の変化として捉えるために、直交したプリズム対を用いている。それらの予備実験を通して、測定系に含まれる様々なバックグランドを抑えられるようになった(Proc. of the Seventh Workshop on Topics in Nuclear Radiation Detection, Miyazaki University, Nov. 2001)。実は、前方に中性粒子しか発生していないことが判明したのは、つい最近になってのことであり、これまでの予備実験では、常に前方に放出される粒子に対して、偏光状態の変化を追っていた。そのため、荷電粒子に対する応答を観測することには、未だ至っていない。しかしながら、検証を行うための測定系は、ほぼ完成したと言ってよい。この執筆を行っている時点で、まさに本実験をスタートしたところである。本実験では、直交プリズム対の間に置く、センサーデバイスとして、複数種類のデバイスを用意している。いよいよ、これから荷電粒子の入射に伴う、検査光の偏光状態の変化の有無を、厳密に議論できると期待している。
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