研究概要 |
シリコンナノワイヤのコンダクタンスを計測するには、原子レベルのコンタクトや、原子レベルのサイズをもつナノワイヤの作製するとともに、それらのシリコン表面が清浄であることが必要と考えた。これらの点を達成するため、始めに、縦横0.1-0.2mm、長さ10mmの細長い棒状のシリコンを固定し、超高真空内にて、イオンシニングや通電加熱による表面の清浄化がおこなえるホルダーを開発した。このホルダーは、ナノコンタクトを作るためのピエゾ駆動が取り付けられており、最大16μm試料を動かすことが出来る。また、このホルダー専用のイオンシニングや通電加熱がおこなうチャンバーを立ち上げ、イオンシニングによる薄膜化も行った。さらに、オシロスコープ・電源をパソコンで制御することにより、400μsec.の時間分解能で、±0.1G_0の誤差で観測できる測定系を作成した。コンダクタンスヒストグラムより、1G_0以下に多数のピークが見られること、1.0, 1.3, 1.5, 1.8, 2.0, 2.2, 2.4, 3.0, 3.9, 4.4, 5.7Goに顕著なピークがわかった。特に、2G_0ピークが大きいのが特徴である。シリコンは金属と異なり、フェルミ面がバレー構造をもつため、結合方位により伝導電子の振る舞いが大きく異なることが考えられる。1G_0程度のコンダクタンスは、原子1個の接点によって得られると仮定すると、原子1個の結合は、様々な方位があるため、1G_0以下に多数のピークが見られると説明できる。一方、高次になると、接点の原子の数が増えるため、結合の強い配向性を考えると原子配列が決まってくるため、とびとびの値しかとらなくなると説明できる。特に、2G_0ピークが大きいのは、バレー縮退が現れていると考えられ、室温においても量子化コンダクタンスが得られている思われる。
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