研究概要 |
前年度に引き続き、ヨウ素を挿入した単層カーボンナノチューブを対象にヨウ素129メスバウアー分光を中心にした研究を行った。主な研究実績は以下のようなことがらである。 1.高〜中濃度にヨウ素をドープしたカーボンナノチューブに関する研究 高〜中濃度のドーピング領域ではヨウ素が15-,13-,12の状態で存在すること、また濃度が低くなると15-,12の割合が減少し、13-が増加することを明らかにした。また、I-の状態のヨウ素が存在し、濃度が低くなるとその割合が増加することを初めて確認した。さらに、合成方法の異なるカーボンナノチューブについて比較をおこない、チューブ径や不純物の割合が異なるにもかかわらずほぼ同様が得られることがわかった。これらの結果についてはHyperfine Interactionsにて公表される。 2.希薄な濃度にヨウ素をドープしたカーボンナノチューブに関する研究 希薄なドーピング領域ではヨウ素が純粋なI-の状態で存在することを初めて確認した。さらに加熱によりI3-からI-に分解する可能性を示唆するデータを得ることができた。 3.ヨウ素がカーボンナノチューブに挿入される位置の検証 カーボンナノチューブの先端を加熱処理することにより開くことができることを利用して、先端の開閉によりドープされたヨウ素の化学形態がどのように異なるかを検討するための準備を行った。ヨウ素がチューブの中外でどのような形態で挿入されるのかは今後の実験で明らかにしていく予定である。 4.ヨウ素129のメスバウアースペクトルの第一原理計算による解析 ヨウ素の電子状態についてDV-Xα法およびWIEN等の第一原理計算によりメスバウアーパラメータを求め、ヨウ素の電子状態の第一原理計算をもとにしたメスバウアーパラメータの解析結果と実験結果の比較検討を行う準備を行った。今後、その結果をもとにカーボンナノチューブとヨウ素との間の電荷移動に関与する電子状態についての解析を行う予定である。
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