研究概要 |
本研究ではIII-V化合物半導体の中でも最近注目を集めているInGaAsに着目し、(InGaAs)_n/(GaAs)_n超格子、(InGaAs)_n/(AlAs)_n超格子を対象とした。試料には分子線エピタキシー装置により結晶成長させた100周期の超格子構造を用い、実験装置には一巻きコイル法超強磁場発生装置を用いたサイクロトロン共鳴測定装置を使用した。 本年度は、従来より長波長レーザを検出光として用いたため測定領域が広げた。さらに、試料を傾斜させて固定できる試料ホルダーを作成し、磁場を試料に対して斜めに印加した実験も可能とした。 以上のような実験を行った結果、次の結論を得た。 1.In_<0.2>Ga_<0.8>As/GaAs超格子で観測されたサイクロトロン質量は、積層数n=6〜18の範囲ではnに関わらずほぼ0.074m_0であった。 2.In_<0.2>Ga_<0.8>As/AlAs超格子で観測されたサイクロトロン質量は、積層数n=6,8,12のとき、各々0.074m_0,0.077m_0,0.080m_0であった。 3.InGaAs/AlAs超格子では、GaAs/AlAs超格子で観測されるΓ-Xクロスオーバーと類似の傾向が観測された。また、GaAs/AlAs超格ではn=15でクロスオーバーが起こったが、InGaAs/AlAs超格子ではより小さいnクロスオーバーすることが示唆された。 4.(InGaAs)_8/(AlAs)_8超格子の積層方向から角度θ傾斜させて磁場を印加したサイクロトロン共鳴を観測したところ、共鳴磁場が電子が各井戸層に閉じ込められた際に示す1/cosθ依存性から低磁場側ヘシフトした。これは電子がミニバンド中を運動しているためと考えると、ミニバンドにおける電子有効質量比がm_z/m_<xy>=1.7と見積もられた。
|