研究概要 |
巨大磁気抵抗を示すMn酸化物、Fe-Mo酸化物は、スピンエレクトロニクス等の分野への応用が期待されている物質群である。本年度は昨年度に引き続きこれらの物質の特異な物性の起源を探るために、光電子分光法によって電子状態の研究を行った。測定では、65eVから200eVまでの放射光を用い、表面処理には昨年度開発した試料劈開装置を利用した。測定対象は(A)ペロブスカイト型マンガン酸化物La_<0.6>Sr_<0.4>MnO3及びLa_<l.2>Sr_<1.8>Mn_2O_7の温度変化スペクトル、(B)二重ペロブスカイトSr_<2-x>La_xFeM_OO_6の低温スペクトル、さらに本研究課題から発展したテーマである(C)二重ペロブスカイト(Sr_<1-x>Ca_x)_2FeReO_6の低温スペクトル、の3つである。近年、遷移金属酸化物についてはやすりがけ表面と劈開/破砕表面とでかなりスペクトルが異なることが解ってきており、(A),(B)については、よりバルクの性質を反映している劈開/破砕表面での測定を中心として、やすりがけ表面との比較も行い、(C)については多結晶試料で劈開表面の質が悪いためにやすりがけ表面での測定を行った。 その結果、(A)については、La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3の試料において、以前のやすりがけ表面についての研究[1]同様の温度変化が観測され、加えてフェルミ準位近傍のより詳細な構造が劈開表面では観測できることを見出した。一方、La_<1.2>Sr_<1.8>Mn_2O_7の温度変化は完全には確かめられていない。(B)については、測定とバンド計算との比較からFeサイトの強いフント則が巨大磁気抵抗の起源となっていることを提唱した。(論文投稿中[2])また、本研究課題から発展したテーマの(C)については測定と解析を始め、本研究課題と関連付けて研究中である。 [1]T.Saitoh et al.,Phys. Rev. B 56,8836 (1997). [2]T.Saitoh et al.,submitted to Phys. Rev. B.
|